8.透析シャント音の数値化は可能か?−周波数表示装置付聴診器の開発−

山内ホスピタル透析室、同内科 1)、同外科2)
 ○ 中原冨美夫、粟野克治、杉本由香里、小嶋寛正、杉本美雪1)、高橋直子1)
  中原康治1)、山内英道1)、宇野郷三2)


【目的】シャント音の周波数特性の計測を行い、シャント音の周波数範囲、およびシャントトラブルとの関係から、透析シャント音の数値化を目的とした周波数表示装置付聴診器の試作を行い、その有用性について検討したので報告する。
【対象】当院透析患者41名を対象とした(自己血管29名、人工血管10名、狭窄音を有する症例2名)。
【方法】ボイスレコーダーで記録したシャント音の周波数帯別音量を計測して、シャント評価の可能性を検討し、その結果を基に周波数表示装置付聴診器の試作を行った。
【結果】41症例のシャント音周波数は31Hzから2400Hzの範囲にあり、2400Hzに音量のあった症例は狭窄のある2症例であった。また1400Hz帯に音量があった自己血管症例9名のうちシャントトラブル経験者は7名で1400Hz帯以下の症例に比較し高率であった。試作した周波数表示装置付聴診器の試用結果では、高い周波数帯でシャントトラブル経験者が多くみられた。
【考察】シャント音の管理を行う上でシャント音の数値化は重要な課題であり、シャント音の周波数特性に着目した、周波数表示装置付聴診器は、看護診断補助装置として有用と考える。また聴覚障害のある透析患者の自己管理用具としての可能性も考えられる。今後は実用器の開発へ向けた臨床での検討を行いたい。
【結語】良好と考えられるシャント音の周波数帯は16〜500Hzの領域にあり、1400Hz帯以上ではシャントトラブルに関わる可能性が示唆された。今回試作した周波数表示装置付聴診器はシャント音の数値化、シャント管理に有用な装置となる可能性がある。